仏像名

 ぶっそくせき

薬師寺
制作年代

    国宝
奈良時代

仏足石

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

右足 47cm
左足 48cm

樹 種

像 高

石の大きさ
高さ 69cm
幅 108cm
奥行 74cm

製作者

安置場所

大講堂

開扉期間

解 説

 仏像は、釈迦(仏陀)の在世中はもちろん、入滅した後も四、五百年間は造られなかった。インドではこの間、人々は釈迦の遺骨を納めたストゥーバ(仏塔)や、足の踏み跡を図にした仏足跡図などを礼拝した。薬師寺の仏足石はインドの仏足跡図を基に奈良時代に造られたことが銘に詳しく刻まれ、仏に寄せた古代日本人の心を伝えている。
 仏足石は六面体に近い自然石で、大講堂の後堂に安置されている。正面()の高さ69cm、幅108cm、奥行き74cmで、石の上面に両足裏が線刻されている。親指の先からかかとまでの長さが右足47cm、左足48cmと大きい。真ん中に仏の教えを象徴する車輪形の「千輻輪相」(センバクリンソウ)が刻まれている。他にも吉兆の文様が多数あるが、風化して細部が見えない。足裏に土踏まずがないのと千輻輪相があるのは仏の身体の「三十二相」(32の特徴)にあり、仏足跡図の定型を踏まえている。読みとれない字も一部あるが、大意はわかっている。―釈迦が初めて説法した聖地、インドの鹿野苑にあった仏足跡図を唐の使節がこれを長安の寺で転写、平城京の禅院に伝わった。753年、天武天皇の孫の文室浄三が亡夫人追善のためこの図を写させ、石に刻ませた。
 仏像がなかった時代に生まれた仏足石は仏像が造られた後も信仰されていたのだ。仏がそばにいるようで、仏を慕う気持ちを託すのに合っているのだろう。日本ではその後も長く各地で造られた。
 大講堂には仏足石の近くに仏足跡歌碑(高さ194cm、幅48cm)が立つ。仏の足跡をたたえる歌21首が短歌に7首を加えた五七五七七七の独自の歌体で詠まれ、万葉仮名で刻まれている。この歌を仏の賛歌のように唱え、仏足石の周りを巡る姿が目に浮かぶ。
 「舎加乃美阿止 伊波尓宇都志於伎・・・(釈迦の御足跡 石に写し置き・・・)」と、
歌碑の万葉仮名の一字一字をたどたどしいながら追っていくと、仏に寄せた万葉人の思慕の念に触れる思いがする。
「探訪 古き仏たち」より 朝日新聞 2014.03.22.

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