仏像名

 でんきっしょうてんりゅうぞう

成島毘沙門堂
制作年代

    重文
平安時代

伝吉祥天立像

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

木造
素地、

樹 種

ケヤキ

像 高

181cm

製作者

安置場所

毘沙門堂

開扉期間

解 説

 頭の上に、二頭の象をおいている姿は、まことに変わっている。尊名は、直ちに決定しかねるが、いずれ九世紀ごろに入ってきた密教の尊像の一つであろう。
 岩手県の奥地で、初めてこの像に接したときの不思議な感動は、今も忘れることができない。キッと唇を閉じ、両目を閉じたこの像の顔つきには、貞観のあやしい呪術が深く秘められているような気がした。
「日本の彫刻」より 久野 健著 吉川弘文館

 ケヤキの一木造。二臂以外は失われているが、もとは多臂で、頭上に2頭の象の頭部を表す。象と吉祥天の関係は、吉祥天曼荼羅などに見られる。頭体ともに重厚だが、表情は穏やかで優美さを備える。
「日本の仏像 勝常寺薬師三尊とみちのくの仏」より 講談社 2008年

 ケヤキ材一木造りで、背面から内刳りを行う。もと十八本の腕を配したとみられるが、真手以外は全て失われている。太造りの体躯と相まって、当初は迫力ある姿であったことだろう。頭上に六牙の象頭二頭を表す点は類例がなく、当初の尊名は不明であるが、右膝をゆるめ腰を捻る立ち姿は、変化観音を思わせる。
特別展「平泉 みちのくの浄土」より 世田谷美術館 2009年

私 の 想 い

 東北美人の典型を見るようで、まことに麗しい。髪型に特徴があって、三つに束ねており、現代の髪型よりもかえってモダンな感じである。
 しかし、それで居て不自然でないのは、何故なのだろうか。それはこの髪型をしていても不思議でない美しさがこの像にあるからかも知れない。
 平成21年3月に世田谷美術館で開催された特別展「平泉 みちのくの浄土」天を第十七回「仏像観て歩き」として、拝観することになりました。
 この時には、次のように書いております。
右手は、脇を開けて肘をV字に折り、手の平を正面に向ける。左手は、右手と同様で両手を肩幅に開いて、胸の前で手の平を正面に向けている。
 両手とも五指の先が欠けてしまっている。掌のみ残る。天衣が一つは両膝上ともう一つは両すねと、二本U字に架かっている。うつむき加減である。
 手品師がお客様に手の内を、明かす為にするしぐさに似て、手の平を開いてみせる。それをまさに吉祥天様がしているのである。
「種も仕掛けもありません。私を信じてください」
と、この美人に言われたのでは、信じないわけに行きません。
 平成24年5月に第五十八回「仏像観て歩き」東北編で「仏像観て歩き」の仲間と訪問したときには、次のように書いている。
 私の中の吉祥天像を観る時の楽しみは、
幾つかその条件を挙げてみよう。

1)太いお腹をしていること。

2)腰に締める紐がどれ位お腹に食い込んでいるか。

3)美人であること。

4)母親然としていること。

5)叔母様度が高いこと。

6)子孫繁栄、五穀豊穣の神に相応しいこと。
などがあります。
 この像には吉祥天像で肝心の 1)と2)が当てはまらない。その他の美人の仏像の名前でも通用する体形である。3)は当然として、4)と5)と6)も外れている。それだけ、特異な吉祥天像である。征夷大将軍の妻に相応しい美人の吉祥天像にしたのかも知れません。
いずれそれぞれの項目に度数を定めて、最優秀賞がどの吉祥天像なのかを調べてみたい。

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