観音堂の本尊としてお厨子に入っている。六臂の半跏像である。国宝の観心寺如意輪観音半跏像よりも少し大きめの等身大の仏像である。
右手の第一手は、脇から腹の前に、ニュウと出して宝珠を手の平に乗せている。第二手は、肘を立膝の膝頭に着けて、拳を握った手の甲を右顎の下に入れる。第三手は、右足の立膝の陰になって良く見えない。
左手の第一手は、脇の下からV字に出して、蓮華の茎を持ち、蓮華を立てる。第二手は肘をV字に横にして、人差指に宝輪を立てる。第三手は、正面から見ると左肩から下に、流れ落ちる衣に隠れて見えない。
右顎に当てた右手の拳に寄り掛かる訳でもなく、うたた寝を楽しんでいる訳でもない。考え事をしているのだろう。
私としては左腹のふくらみが気に掛かる。立膝の膝の角度も気になる処でもある。二十歳前後の若いお嬢様である。
「可愛いよ」
と声を掛けると、つむっていた眼を開けて
「ありがとう」
だと。
十一面観音像の魅力について、私のホームページ「仏像観て歩き」の滋賀編で紹介している。その滋賀編の中で井上靖作品「十一面観音」も紹介しているので、是非、ご住職に読んで頂きたいと思っている。そのホームページの出し方を紹介する案内書をご住職にお渡しする事もある。
もう一度、この如意輪観音像に逢いたくもあり、翌日も行き、二日続けての拝観になったのである。受付に聞くと何処にいらっしゃるか判らないという。境内に入って行くと、作業服に身を包んだ姿のご住職が向うからやって来る。
上記の来意を伝えるとそのままの姿で、先に立ち観音堂を案内してくれる。
「今日は特別開帳の更に特別拝観です」
と言って、内陣に入って行き、私にも内陣に入る様に招き寄せる。
「ここは、年末の御身拭いの時以外は開けません」
と言って、お厨子の脇の扉を開ける。そこからは、如意輪観音像を横から仰ぎ観る位置になる。
左手の第三手は、肩から下に肘を伸ばして、真直ぐに降ろす。手を隠している衣を手の平の下に敷き、直接床に手の平を着いていないのである。手の平でしっかりと地上を支える。
特別の計らいで、普通は観る事が出来ないところを拝観する事が出来たのである。第三手以外に私は、もっと凄いのを観てしまった。
胡坐を組んだ左足太腿の太いのを観てしまったのである。裾がめくれて太腿があらわになったところを観てしまった。
「あら、そんなところを観てたのね」
と言って、目配せをしてくれた。
「また、いずれ来るようにします」
と心に誓ってお別れする。
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