仏像名

ふりがな じごくてんりゅうぞう

唐招提寺
制作年代

重文
奈良時代

持国天立像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

木造
素地

樹 種

カヤ

像 高

132cm

製作者

安置場所

講堂

開扉期間

解 説

 唐招提寺講堂本尊弥勒仏像の前方左右に立つ像である。その作風から一具同時の作と観ることに問題は無いが、本来の二天像なのか、四天王像中の二躯が残ったものなのかは不明である。持国天・増長天という名称も確かではない。
 二躯はいずれも頭上に髻を結び、顔をやや右に向け、左手を下げ(戟を持つ形)、腰を右に捻って邪鬼上に立つ姿である。持国天は口を閉じ、右手に剣を取って高くかざすが、右腕は後補である。ともに桧材の一木造りで、髻頂から足枘までを完全に一材から彫り出し、内刳りもない。邪鬼は近世の後補で、もとはこれも本体と共木から彫り出していたものと思われる。表面は現在まで全く素地を表わしている。
 ずんぐりとして一種ユーモラスな、量感に溢れる体躯の表現や、増長天像の胸下に巻かれた帯や腰甲の形などの新しい形式は、中国陜西省博物館蔵神将立像のような、盛唐後期の石彫像に通ずるものがある。
 また甲の細部やその装飾文様を克明に刻み出す点には、中国檀像の技法の影響も認められる。唐招提寺には、鑑真の来朝によって、もたらされた唐代彫刻の最新の影響によって天平宝宇年間(757765)ごろ成立したと考えられる。
 伝衆宝王菩薩像、伝獅子吼(ししく)菩薩像など一群の木彫像があるが、この二像それらと同時期の製作であろう。
 甲の形式の基本が、730年代に完成した日本独自の伝統形式であることも指摘されており、それを守りながら唐代彫刻の最新の意匠を、積極的に取り入れているところに、本像作者の姿勢がうかがわれよう。
 奈良・大安寺には、この二像と相通ずる特色を持つ、ほぼ同大の四天王像があるが、この二像のような緊迫した充実感は、すでに失われ、表現の日本化が顕著である。
「特別展 大和古寺の仏たち」 1993年 東京国立博物館より

 持国天像も増長天像と同様の環境で造られたことは確かであるが、甲の文様の立体的な彫出や質感表現の追及に、増長天像に見られるほどの、徹底した造形にまでは及んでおらず、やや淡白な印象はまぬがれない。
 これは、中国の仏師内でのレベルの差としても捉えられるが、あるいは中国の仏師の指導を受けた日本の仏師の参画を想定してもよいだろう。また、持国天の腹甲や石帯の右側には文様が表わされていないので、本来右腕は体部と共木で彫出し、かつ下げていたと推定される。
 なお、唐時代の石彫像との比較から、この像を含む唐招提寺の木彫像の造立に石彫を専門とした仏師の関わりを説く見解もあるが、これらの木彫像には木の特性を熟知し、その彫出には熟達していなければ成し得ないような造形の冴えがあり、木彫を専門とする仏師の関わりを想定すべきと思われる。
「仏像 一木にこめられた祈り」展 東京国立博物館 2006年より

私 の 想 い

 弥勒像の前の東南に立つ。右手を大きく振り上げて投付けようとしている。左手は下に降ろし、左腰の前で握り拳を作って、戟でも持っていたのだろうか。
 邪鬼は腹ばいになり、右頬を右足で踏まれ、左足で腹を踏まれる。腹ばいになったまま左足を折って、じたばたさせ、足の裏を天に向け苦しさを表わす。
 平成18年10月に「仏像 一木にこめられた祈り」展として、東京国立博物館で開催され拝観した時には、次のように書いている。
 右手は肘を肩の高さに横に上げ拳を握って振り上げる。左手は肘を伸ばして腰の位置で拳を握る。戟を握っていたのかも知れない。
 邪鬼は一頭で四つんばいになり、後ろの腰と肘で這いつくばる。右手で顎を突き上げ、左手で這いつくばる。褌は縄の褌が尻に食い込む。形勢の割には、平然としている。眼には玉眼が光る。持国天は彫眼なのに、邪鬼は玉眼である。
 邪鬼の足は、偶蹄目の二つ爪でなく、三つ爪である。牛や羊の二つ爪をした邪鬼を多く見てきたが、この邪鬼は三つ爪である。ちなみに手は、四つ指のようである。

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