仏像名

ふりがな ぞうちょうてんりゅうぞう

唐招提寺
制作年代

    重文
奈良時代

増長天立像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

木造
素地

樹 種

カヤ

像 高

128cm

製作者

安置場所

講堂

開扉期間

解 説

 唐招提寺講堂本尊弥勒仏像の前方左右に立つ像である。その作風から一具同時の作と観ることに問題は無いが、本来の二天像なのか、四天王像中の二躯が残ったものなのかは不明である。持国天・増長天という名称も確かではない。
 二躯はいずれも頭上に髻を結び、顔をやや右に向け、左手を下げ(戟を持つ形)、腰を右に捻って邪鬼上に立つ姿である。
 増長天は口を開いて、右手に三鈷を握る。共に桧材の一木造りで、髻頂から足枘までを完全に一材から彫り出し、内刳りもない。邪鬼は近世の後補で、もとはこれも本体と共木から彫り出していたものと思われる。表面は現在まで全く素地を表わしている。
「特別展 大和古寺の仏たち」 1993年 東京国立博物館より

 弥勒仏坐像を本尊とする唐招提寺講堂に安置される二天王立像である。いずれも頭部から足枘までをカヤとみられる針葉樹の一木から彫出し、内刳りは施さない。持国天像では右肩より先、増長天像では右前膊、左手首先などは後補である。
 各部に補修の跡が見られ、一部像容を損ねているが、重量感あふれた迫力ある造形は十分にうかがうことが出来る。
 特に増長天像は、より精彩のある造形を各所にうかがうことが出来る。まず頭髪は上方に梳き上げて頭上に髻を結ぶが、柔らかな質感と髪を強く梳き上げた感覚がよく表現されている。
 眼球面を盛り上げ、白眼と瞳を刻線で区別し、さらに瞳は球状に表わし眼を剥いて怒る表情を巧みに演出している。口を開けることによって生じる面部の筋肉の動きを微妙な起伏で的確に表現している。
 正面の両脚間に垂れる裙の裾は深くえぐるように彫り込んで布の折り畳みを表わし、奥の部分にも衣文を表わすなど、奥行きと立体感のある表現を実現している。 また、袴は膝の下方を紐で括っているが、括ることによって袴の上部が膨らみ、そこに生じる衣文が写実的に捉えられている。
 甲には宝相華を主体とする植物文様をあしらうが、いずれも立体的に表わし、浮き彫り作品としてみても、見事な出来栄えを示している。文様の一つ一つの形が明確で、全く形に崩れが見られない点も特筆される。
 体の動きに伴って生じる甲や衣の微妙な動きが、それぞれの質感の違いとともに、細部にわたって有機的に捉えられており、この像は技術力、表現力ともに木彫像として最高の水準に達しているといっても過言ではない。その造形の質の高さは、同じ唐招提寺の伝薬師如来像、伝獅子吼菩薩立像伝衆宝王菩薩像、と共通する。
 いずれも、木心を後方に外した材を用いるなど、その造法も一致しており、この像も、また鑑真とともに来朝した中国の仏師によって造られたとみるのが妥当だろう。
「仏像 一木にこめられた祈り」展 東京国立博物館 2006年より

私 の 想 い

 弥勒像の前の南西に立つ。右手は脇を締めて深く肘を折って、肩の高さで拳を握る。左手は真直ぐ下に降ろして、左ひざ上で拳を握る。
 仰向けに寝た邪鬼は、右肩を左足で踏み上げられ、腹を右足で踏み下ろされて、左腕を後ろに突っ張って、口を曲げてもがき苦しむ。
 上の大将は、大きく口を開けて、
「よっしゃ」
と、ガッツポーズを取ったところと言っても好い。
 平成17年4月の「仏像観て歩き2」で訪問した時には、金堂の四天王像や梵天、帝釈天像も金堂改修工事のために、講堂にお客に来ていた。
 平成18年10月に「仏像 一木にこめられた祈り」展として、東京国立博物館で開催され拝観した時には、次のように書いている。
 右手は労働組合の「がんばろう」の姿勢である。左手は左腰の位置で、拳を握って構える。
「こらっ。」
と怒って大きく口を開ける。口の中の上顎が見えて、剥き出した歯が刻まれて見える。
 邪鬼は仰向けに寝せられ、右肩を左足で踏まれ大きな腹を右足で踏まれる。邪鬼の右足は地に着け、左足は上にあげて、足の裏を天に向け宙に浮かせ、じたばたさせ両目を剥いて苦しがる。その眼には玉眼が入って光る。

増長天立像画像一覧その1
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