仏像名

ふりがな　しゃかにょらいりゅうぞう

唐招提寺
制作年代

　　　　重文
鎌倉時代

釈迦如来立像

様　式

正嘉二年(1258)

俗称又は愛称

製作材質

木造、素地
切金文様

樹　種

像　高

１６６ｃｍ

製作者

安置場所

礼堂

秘仏

開扉期間

１０/２１〜１０/２３（釈迦念仏会）に開扉

解　説

　鎌倉時代には、清凉寺に本尊釈迦如来像の模刻が流行したが、この像もその一つ。清凉寺の釈迦如来像は永延元年(987)、�｢然が中国から持ち帰って来た極めてインド的な尊像で衣文線が平行線を描いて細かく刻まれて居る服装に特色がある。これを模刻した像を清凉寺式釈迦如来立像と呼んでいる。
「日本の彫刻」　久野健編　吉川弘文館　１９６８年より

　これも清凉寺釈迦の模刻である。像内納入文書によって、正嘉二年(1258)、ころに造立され、一万人に及ぶ衆庶の結縁があった事が知られる。作者は判らないが、西大寺像と良く似ているから、やはり善慶の系統を引く仏師の手になったものであろう。
　清凉寺の本尊はもともとインドの彫刻あるいはその模像の宋代における模刻で、かなり特異な作風を示しているが、これには、異国的な趣は失われ、穏やかな表現となっている。また、原像は主衣に切金を、置いたものであったと考えられるが、この二像が素地に切金を置いているのは、この頃、すでに原像の彩色剥落が甚だしかったのであろう。寄木造。
「運慶と鎌倉彫刻」　小学館　１９７３年より

私 の 想 い

　清凉寺の釈迦如来を模刻した像という。西大寺とこの唐招提寺とは距離的には極近い。それでも同じものを造らせる力とはいったい何なのだろうか。
　西大寺の像が建長元年(1249)に、唐招提寺の像が正嘉二年(1258)の作という。九年の時を隔てているが、瓜二つである。寸分違わぬ作と言って好い。鋳型に流し込んで造ったように同形である。木造であるから鋳型であるはずがない。
　しかし、同形である。どれだけ原形に忠実に再現出来るかという事が、本体と同じご利益に与れる(あず)か、という事に繋がると思われていたのだろう。
　たまたま、ここで利用した画像が「運慶と鎌倉彫刻」では二像を並べて紹介してくれている。違いを探すと、わずかに、下半身の例の清凉寺式釈迦如来の特徴である衣文の彫り方に違いを見つける事が出来た。これも不思議な事と言える。
　Ｙ字形に刻まれる衣文が西大寺像の方は、Ｙ字が絞られた形に刻まれ、一方の唐招提寺像の方は、緩やかにＹ字が刻まれている。三像の写真を並べて初めて判った事は、Ｙ字に刻まれた衣文の数の違いで、西大寺像が原形に近く数本であるが、唐招提寺像は三本で刻まれている。
　ここで清凉寺式釈迦如来立像の必須条件を考えて見たい。

1.　立像である。

2.　通肩である。

3.　右手は与願印で左手は施無畏印である。

4.　胸から腹に掛けての衣文線が同心円である。

5.　股間の衣文線がＹ字形である。

6.　両脚の衣文線は、さざなみが岸に寄せるように太腿から下に落ちている。

以上の条件を満たしたものを清凉寺式釈迦如来立像という。