仏像名

ふりがな　　しゃかにょらいりゅうぞう

清凉寺
制作年代

国宝
北宋時代

釈迦如来立像

様　式

西暦９８５

俗称又は愛称

製作材質

木造、切金
素地

樹　種

像　高

１６０ｃｍ

製作者

張延皎・張延襲作

安置場所

本堂

秘　仏

開扉期間

毎月８日

解　説

この尊像は釈迦３７歳の生き姿を刻んだものである。昔、お釈迦さまが生母である摩耶夫人に法をとくために朷利天に登られたとき、時の優填王や弟子達は慈母を失った子供の様に嘆き悲しんだ。
　そこで優填王は、毘首竭摩（びしゃかつま）に命じて、栴檀（せんだん）の香木で釈迦生身の尊像を造らせたのである。
　９０日後、お釈迦さまが戻って来られ、自分と寸分違わぬこの像をご覧になって、
「私が亡き後は、この像が私に代わって衆生を済度するであろう」
と言って、大層お喜びになったという。
　後にこの尊像はインドからヒマラヤを越えて中国へ伝えられた。中国に渡った東大寺の僧、�｢然上人は、寛和元年(985)その尊像を模刻し日本に持ち帰った。
「清凉寺縁起」より

　清凉寺は天禄三年(972)、に東大寺の僧�｢然と義蔵が、京都の愛宕山に一寺を建立しようと誓った事に端を発し、�｢然の弟子盛算が師の遺志を継いで、愛宕山に近い現在の地に創立した寺である。
　この寺の本尊釈迦如来像は、雍煕（ようき）二年(985)、宋に留学中の�｢然が、五世紀頃インドから中国へ持ち来たという仏弟子優填王の造った釈迦の像を拝観し、張延皎、延襲兄弟に模刻させた仏像である。�｢然はこの像を護持して、寛和三年8987)、に日本に無事帰る事が出来た。
　この像は頭髪を縄の様に編んで幾束かにし、それを渦巻状に巻いており、またすぐ下まで覆う通肩の納衣の皺を同心円状に彫るなど、今までの日本の仏像とは非常に違った姿に造られている。
　この像こそ、真の釈迦の姿を写した三国伝来の瑞像（ずいぞう）なのだと、この像を拝観する人々は皆感激した。平安時代の南都は、比叡山の天台宗に押さえられて振るわなかった。
　�｢然と義蔵はこの状態に奮起して、都の東北にある比叡山と相対する西北の愛宕山に一伽藍を建て、延暦寺に対抗しようとした。この様な決意を持って宋に留学した�｢然が、優填王作の釈迦の像を拝観して、真の仏教を広めるための伽藍の本尊は、この像でなければならないと考えたのは当然であった。
　ちょうど、鎌倉時代の振るわない、南都の教学を復興しようとして、明恵や貞慶や叡尊達が、釈迦遺身の舎利を崇拝し、釈迦の教えに帰ろうとしたのと、似た運動が、すでに十世紀に�｢然によって企てられたのである。
　その運動は、�｢然の生涯には果たされず、清凉寺の建立は�｢然没後に実現し、しかも愛宕山上ではなく、山麓に建立される事になった。
　しかし、三国伝来の釈迦の像に対する信仰は、各時代の模刻像が全国に分布している事でも判る様に、各時代各地域に亘って盛んであった。
　なお、この像の胎内には、�｢然義蔵結縁朱印状、入宋求法巡礼行ならびに瑞像造立記、絹製五臓など、興味深い品々が納められていたが、現在では取り出されて別に保管されている。
「京都の仏像」　淡交社　１９６８年より

清凉寺式釈迦如来模刻像は各地にあり、
「京都」因幡薬師堂、知恩院宝仏殿、三室戸寺。
「滋賀」西明寺。
「奈良」西大寺、唐招提寺、大善寺（五条市）。
「関東」大円寺（目黒区）、称名寺（横浜）、極楽寺（鎌倉）、正覚院（八千代市）。
の１１ヶ寺あるという。
「霊宝館特別公開」解説書より

私 の 想 い

このお釈迦様にお目に掛かるまでに永い時が過ぎてしまった。仏像に関心を持つ様になってから、このお釈迦様の存在は、清凉寺式という事で知り、何時かは本物を観たいと思っておりました。
　ついにその時が来たのです。奈良の西大寺もそうだし、幾つかのあなたを模して造られたお釈迦様を観て来ました。あなたのご利益に預かりたいと模したに違いない。本物にお願いすれば、それに越した事はない。
　右手は施無畏印、左手で与願印のオーソドックスな印相であり、これがお釈迦様の原形なのでしょう。さすがにお釈迦様はお手が大きい。左右の手から発せられるパルスに圧倒される。
　足の長い方である。足の存在を衣の文様で表わし、真直ぐに伸ばしている。膝頭のところで文様を変えて、細かい波型になる。くるぶしから下は素足である。ほっぺたが光って見える。お厨子の裏側に回ると製作時の絵が大きく描かれている。
　劇場の緞帳よろしく、電動式のリモコンで作動するお厨子に入っているところでお目に掛かった。黄色い電灯を消して、蝋燭の光で観てみたいと思う。