仏像名

 11めんかんのんりゅうぞう

東大寺
制作年代

重文
平安時代

十一面観音立像

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

木造、漆箔
彩色

樹 種

像 高

175cm

製作者

安置場所

二月堂

開扉期間

解 説

 東大寺二月堂の修二会(お水取り)の本行が今年ももうすぐ始まる。1263回に及ぶこの行法の本尊は2体の十一面観音菩薩。大観音、小観音と称され、東大寺の僧さえ目にしない絶対秘仏である。
 写真は大観音の背後に立っていた銅造舟形光背・身光の一部だ。江戸前期寛文七年(1667)会中の出火で二月堂が全焼、頭部を飾る銅造円形光背の頭光や天衣の破片とともに搬出された。両光背は火事でばらばらに割れ、欠損も多く、被災後は残片を舟形に整理補強し、堂外で保管されるようになった。
 比較的欠損の少ない身光の表裏両面には、美術史の一級資料とされる芸術性の高い線刻図が鏨彫りされている。
 千手経に基ずく観音の神変を図像化した仏画で、表には千手観音を中心に多くの仏菩薩や天部像を、裏にも陰刻の須弥山や仏像群などを配している。天平の線刻図としては東大寺大仏の銅造蓮弁に残る蓮華蔵世界図と並ぶ傑作だ。
 この光背は、線刻図が素晴らしいだけではない。大観音の像容に迫る情報も多い。まず像高。光背の高さなどから2m前後と推定できる。光背や天衣片は鍍金。とすれば像も鍍金で、光背の優れた意匠や技法と併せ像本体も秀作であることが確信できる。
 さらに覚禅鈔という中世史料には大観音の頭部図像が載っている。それらを推量すると奈良・聖林寺の木心乾漆十一面観音や奈良・薬師寺の銅造聖観音の国宝像が思い浮かぶ。秘仏大観音の像容への思いは広がるばかりである。
 ちなみに、もう一体の秘仏小観音も厨子の寸法や重さから像高数十センチの金銅像と推側でき、中世史料の類秘抄には頭上面4段の図像も残る。小観音の姿にも好奇心が動く。
 両光背は今、裏補強を修理中だ。そのため奈良国立博物館で開催中の恒例の「お水取り」展には今回欠場。だが、身光の拓本や覚禅鈔、類秘抄などは出展されており、秘仏の像容は十分にしのべる。
 熱心な仏教信者は、仏像が見えなくても心は安らぐ。霊験を信じて崇敬する人の多い二月堂の秘仏十一面観音2体はまさにそんな仏像である。
「探訪 古き仏たち」より 朝日新聞 2014.02.22.

私 の 想 い

 痩身の十一面観音像である。痩身の身と揺れて流れ落ちる天衣で、像全体が揺れているように思える。
 右手はそのまま肘を伸ばして下に降ろし、腕に纏わる天衣を握り、天衣を下に垂らす。左手は肘を直角に曲げて、前に出し手首を返して、手の平を正面に向ける。
 親指で中指を摘み、影絵のキツネの指型である。気品があり脚長の美人である。腕の形を除けば、左右対称の立像であり、大安寺ゃ唐招提寺像に似ている。

十一面観音立像画像一覧
十一面観音立像
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東大寺所蔵仏像
二月堂
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十一面観音像の考察