仏像名

ふりがな みろくにょらいざぞう

薬師寺
制作年代

重文
奈良時代

弥勒如来坐像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

銅造
鍍金

樹 種

像 高

266cm

製作者

安置場所

講堂

開扉期間

解 説

 金堂の背後に位置する講堂は、もとは持統天皇が天武天皇のために造顕した阿弥陀大繍帳(刺繍の仏画)を本尊とした建物である。平安時代になってからは、天下三会の一つに数えられる最勝会の行われる会場として、薬師寺内にあっても、特に華やかな脚光を浴びる堂宇であつたが、天禄元年(973)の失火焼失、その後すぐに再建されるが、享禄元年(1528)の兵火で、本尊の阿弥陀大繍帳ものとも焼失してしまった。その後、嘉永五年(1852)仮講堂の再建が行われ、まず、西院弥勒堂にあった弥勒三尊像が、講堂の本尊として迎えられる。
 この時講堂本来の本尊である阿弥陀繍帳を継承して、尊名を弥勒から阿弥陀に改めて移座した。明治以降は薬師に改められたが、此度の修復を期に再び阿弥陀に改める予定である。
 像は金銅造の丈六三尊であるが、像高は金堂三尊より一まわり大きい。中尊は右手を挙げて掌を前に向け、左手は掌を上向けて膝上に置き、左足を上にして結跏趺坐する。口唇を突き出した癖のある面貌は、一種個性的な強さがあるが、膝の横張りが大きく、またかなり胴長になった体躯は、肉付けの抑揚が乏しく、金堂中尊像にみられるような張りのある充実感はない。衣の表現でも、金堂中尊像で行われたような的確な写実感覚に支えられた。微妙な質感を示すまでには至っていない。
 また、足先を衣の下に包んだ特徴的な表現は、和銅四年(711)完成した法隆寺五重塔の塑像に、早い時期の作例をみることができるが、天平時代以降にもいくつかの類例をあげることができる。また、印相は弥勒三尊像に共通している。
 左右の両脇侍像の表現は、三面頭飾の形やひねりをきかせた身の構えあるいは腹部にみる肉のくびれなど、金堂本堂の両脇侍像の様式に系統づけられる要素が多い。
「薬師寺講堂三尊像特別公開」より 1997年発行

私 の 想 い

 右手は脇を締めて肘を折り、前に出して手首を返し、手の平を正面に向けた施無畏印である。
 左手は脇を締めて手の甲を左膝の上に乗せ、与願印である。左足前に組む、降摩座である。偏袒右肩の衣装である。
 平成20年4月の「もうひとつの薬師寺展」で薬師寺東京別院に訪問した時には、次のように書いている。
 国宝の日光・月光菩薩像が東京国立博物館に来るのに合せて、同時開催で薬師寺東京別院でも、文字通り「もうひとつの薬師寺展」を開催している。
 この展覧会は、薬師寺所蔵の仏像で金堂、講堂、東院堂三堂以外のものを一堂に集めて公開している。博物館や大宝蔵殿やその他で展示しているのを一堂で拝観出来る展覧会である。
 薬師寺で一つ疑問がある。この機会に疑問を解決したいと思っていた。疑問というのは古い資料によると、講堂の本尊は、金堂の国宝と同じように薬師三尊として、紹介されている。金堂と全く同じで、金銅製であり、脇侍も似ている。
 別の資料では、講堂の本尊は弥勒如来坐像という。そういえば、唐招提寺も講堂は弥勒如来坐像である。
 そこで東京別院で係りの人に
「講堂のご本尊は、薬師さんですか。それとも、弥勒さんですか」
と、聞いた。
「弥勒如来様です」
と、いう。これで疑問が解けたことになる。
 しかし、心根からの天邪鬼の私には、まだ、疑問が残る。それは、ある時は薬師如来と名乗り、またある時は、弥勒如来と名乗り、またある時は、阿弥陀如来と名乗るという。
 これでは、片岡千恵蔵の多羅尾伴内ではないか。多羅尾伴内は変装するから好いが、この仏様は、地であり、名前を時々で使い分ける。これでは何でもありである。政治の世界では、許すとしても宗教の世界もありかい。
 仏様の姿で名前を使い分ける方法と、お堂に合わせて名前を使い分ける方法があるように見受けられる。お堂に合わせてであれば、この仏様はぴったりと納まる。
 観心寺の如意輪観音像ではないが、試作品で造ったものも残っていると考えると、同じように薬壷を持たない薬師如来と考えられなくもない。
 また、疑問が拡がり、今日も眠られなくなってしまった。
 ここ数年間かの年賀状は、仏像のある寺の中から「国宝・重要文化財を訪ねる」シリーズを紹介して来ました。来年の年賀状は、大日如来と弥勒如来ということにしました。
 唐招提寺も講堂に弥勒如来が祀られている。ブラームスの第3番を奉じたので、ここは第4番交響曲を奉じよう。
 第1楽章は、弦楽器で始まる。第1主題を弾く。そして、第2主題をビオラ、チェロの低い弦で弾く。トランペットと弦楽器のピッチカットで奏でる。ここでもブラームスの得意のピッチカットが出る。短くトランペットが吹く。ティンパニーがリズムを取る。弦楽器の第1主題が奏でられて終曲に向かう。
 弦楽器が流麗に第2主題を奏でる。トランペットが後を急き立てる。続いて弦楽器が煽る。ティンパニーが尻を叩く。第1主題の変奏が繰り返され、ティンパニーの連打で終える。
 第2楽章は、トランペットが高らかに第1主題を吹き上げる。これにコールアングレーが後を追う。さらにホルンも続く。コトラパスがピッチカットでリズムを刻む。
 弦楽器の高い音で、第2主題が流麗に奏でられ、コントラバスがピッチカットでリズムを刻む。
 第1主題の変奏を繰り返し、弦楽器と管楽器が交互に奏でる。ホルンが高らかに吹き、フルートが続き長く後を引き終える。
 第3楽章は、第1主題を弦楽器が弾き、ティンパニーがリズムを刻む。第2主題が軽快に始まる。ティンパニーと弦楽器が対話をする。時々、トライアングルが鈴の音を鳴らすようにチリリンチリリンと打ち鳴らす。
 フルートが第1主題を吹く。ホルンが吹き、コントラバスがピッチカットでリズムを刻む。時々、トライアングルが鈴の音のように連打する。
 弦楽器と管楽器が対話する。弦楽器とティンパニーが対話をすると変奏が繰り返され、ティンパニーのドンで終わる。
 第4楽章は、トランペットとトロンボーン、ティンパニーの会話から始まる。フルートの独奏が長く続く。クラリネットに代わり、ホルンに代わる。
 ティンパニーと弦楽器の対話に加え、管楽器が絡む。ティンパニーの連打で終わる。ブラームスはこの曲では、楽器の特性を活かした使い方をしている。
 この曲が終了した後で、何回目かに指揮者が呼び出された時に、まずは、ティンパニー奏者を指名して、聴衆に紹介している光景が目に浮かぶ。それ程にティンパニーの活躍が目立つ曲である。

弥勒如来坐像画像一覧
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弥勒・不空羂索の所在と制作年代