仏像名

ふりがな やくしにょらいざぞう

薬師寺
制作年代

国宝
飛鳥〜奈良時代

薬師如来坐像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

銅造
鍍金

樹 種

像 高

254cm

製作者

安置場所

 金堂

開扉期間

解 説

 薬師寺金堂の本尊として、大理石の仏壇上に、安置されているのが、この薬師三尊である。中尊薬師如来像は、宣字形台座の上に結跏趺坐し、日光、月光像は、蓮座の上に、やや腰をひねって立っている。この三尊像の制作年代については、二説あって、今日もなおいずれとも決定しない。
 薬師寺の草創は、天武天皇の即位八年(680)、皇后のご病気平癒のため、当時都のあった藤原京の木殿に一伽藍を建立した事に始まる。ところが、その勅願の薬師寺の寺地も決まらないうちに、天皇が病に倒れたので、皇后(持統天皇)が、その志を継がれ、この薬師三尊像は、その十一年(697)、に開眼供養が行なわれた。
 その後、平城遷都のことがあり、薬師寺も、藤原京にあった諸大寺と共に奈良の都に移転した。この時、藤原京の薬師寺の由緒ある、本尊を移したものが、今日の薬師三尊像であるとすれば、その制作年代は 697年となる。古くは、すべて、この説が採られていた。
 ところが、細かな文献的研究が進むと、藤原京の薬師寺は、平城京への移転により、全く無くなったのでは無く、元薬師寺の名で平安時代頃まで、土地の人々の信仰を集めて居た事が判って来た。して見ると、元薬師寺にも本尊がなければならない筈で、現在の薬師三尊は、平城京の薬師寺で新鋳したものかも知れぬという説が出て来た。
 しかも、様式的には、奈良彫刻の円熟を思わせるところから、この説もなかなか有力である。この説を採れば、製作年代は養老神亀年間(717728)、となる。しかし最近では、むしろ前説が文献的には強く、再び 697年製作説を支持する学者が多くなりつつある。
 三尊は、いずれも、金銅像で、一部には鍍金も残っている。火中した時に偶然、こうなったのであろうが、三尊共、不思議なほど黒光りに輝いている。中尊は、台座の一部が、破損している他は、殆んど完全な姿で残っている。日光、月光像も、両腕から垂れる天衣の一部が失われ、日光像の冠帯の飾りと、台座が破損している他は、良く残っている。ただし、三尊とも光背は近世の補作である。
「日本の彫刻 上古〜鎌倉」 美術出版社 1966年より

 天武八年(680)、天武天皇は、皇后(後の持統天皇)の病気が治る事を祈って、薬師寺を建てることを発願した。
 しかし、寺を何処に建てるかも決定しないうちに天皇は亡くなられたので、次の持統天皇がその遺志をつぎ、今日の飛鳥地方の木殿に建てたのが薬師寺の始まりである。その寺の本尊である薬師如来像は、持統十一年(697)、に完成したという。

 ところが、都が平城京に移ると、この薬師寺も養老二年(718)ごろに奈良の西ノ京に移った。後世の文献ではあるが、今日の薬師三尊像は、養老二年に薬師寺が移転後制作したものだと、書いてあるものもある。そのため学者の間では、この三尊像の制作年代をめぐり、持統十一年説と養老二年説とがあるが、現在は、前説の方が有力である。
「日本の彫刻」 久野健編 吉川弘文館 1968年より

私 の 想

  黒くにぶい光を放って静かに座っておられる。拝む者の祈りや悩みを一つ一つ考えて、教えてくれるこの薬師さんの前に立った時、日ごろの苦しみや悩みを、全て告白したくなる。
 その告白をこの仏様はきっと聞いてくれる。親身になって考えてくれる。解決方法を教えてくれる。
 泰然として揺ぎ無い、迷いの無いこのお顔を観る時、人間の顔の弱さと頼り無さを感じる。思慮深い心と強靭な精神を持った人、つまりこの像のような顔の人に、少しでも近づきたいものである。
 全ての煩悩から解き放たれた時、我々俗人では、死顔の時にしか、出来ない顔なのかも知れない。
 逆な言い方をすれば、煩悩があるから人間、煩悩があるから人間生きられると考えると楽に生きられそうである。
 舟形光背の反り返りが、像全体を負い被さるようになっている。胸を残してゆったりと纏われた衣の衣文と、その線の緩やかな流れは、その美しさを一層引き立てている。
 台座に垂れ下がる裳も余裕を持って、幾重にも重なって垂れる。台座の四方には、方位を示す守護神が刻まれている。葡萄の房や唐草の文様も框に観られ、像全体のみならず、台座に至るまで、最新のものを取り入れた仏像である。
 右手は脇を締めて肘を折り、前に出し手首を返して、手の平を正面に向ける。左手は脇を締めて肘を折り、太腿に着けて手の甲を、左足のふくらはぎに乗せ、薬指を直角に立てて、手の平に薬壷は載せていない。

薬師如来坐像画像一覧その1
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