仏像名

ふりがな やくしにょらいざぞう

宝城坊
制作年代

重文
平安時代

薬師如来坐像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

木造、素地

樹 種

カツラ

像 高

215cm

製作者

安置場所

秘仏

開扉期間

1/1  1/2  1/3   1/8  4/15

解 説

 お薬師さまとは、一名瑠璃光如来ともいい、浄土は東方浄瑠璃浄土で、この浄土の教主です。薬師如来は、また大医王仏ともいわれ、除病延寿、衣食満足等の十二の誓願を持ち衆生の病患を救い、光を失った眼に天来の光を授け、法薬を与えるなど、緒悪病を除くばかりか、除産苦、求子、返呪咀等の七難を除去してくださる等、現実的な利益を信者にお与えになる仏さまです。
 薬師さまの浄土には多くの菩薩が住み、如来について法を学んでいるが、日光、月光、両菩薩が上首に位し、如来の両脇にお立ちになっています。また薬師さまには眷属として十二神将がつき随っていらっしゃいます。薬師如来の十二の本願を護持するとともに、この如来の信仰者を守護してくださる薬叉神です。
 四天王は仏教における四方鎮護の天で、国士の四方を守護します。本尊の薬師如来は鉈彫と呼ばれる手法で関東地方を中心にまつられています。素朴な感じを受けますが、すばらしい姿をしておられます。
 大江公資の妻相模が詠じた歌
さして来し、 日向の山を頼む身は、 目も明らかに見えざらめやは  (相模集)
「日向薬師 宝城坊の解説」より

 平安時代の中期頃から始まる鉈彫初期の代表的な作例。三尊ともカツラの一木から彫出する。内刳りは施さない。薬師如来像は台座も当初のものである。薬師如来像の右の肘より先と薬壷、および右脇侍像(左手をあげる)の両足先は後補である。
 薬師如来像は顔や胸を滑らかに仕上げ、螺髪を精細に刻み出すが、それ以外は台座を含めてノミ目を整然と刻んでいる。
 一方、両脇侍像は顔や胸、宝冠、下げた手の指先に至るまで、全身にノミ目を残している。薬師如来像と脇侍像でノミ目を刻む場所に違いをつけたのは、如来が化現がより進んだ姿、両脇侍はその前段階の姿であることを意識し、また、そこに尊格の違いを示そうとしたのであろう。
 三尊とも彩色をせず白木のままを留めるが、眼、眉、ひげ、瓔珞などを墨で描いておりこの状態で完成させたことがわかる。
 薬師如来像の耳を横に強く張り出す表現や、脇侍が一木から頭部および体部と円筒形の宝冠を彫出することは、九から十世紀ころの仏像に見られる形式である。また、脇侍の天衣が膝と背面でそれぞれ一条ずつ懸かる表現を示す例はすくないが、そのほとんどの作例が十世紀を中心にその前後の時期に集中している。これらの形式をもちながらも、作風が穏やかになりつつあることから、制作時期は十世紀後半頃と推測される。
「一木にこめられた祈り」特別展 2006年より

私 の 想 い

 平成18年10月に東京国立博物館で開かれた特別展「一木にこめられた祈り」に、鉈彫一木造り最初の作品として展示されていました。
 右手は脇を少し開けて、肘をVの字に折り、手の平を正面に向ける施無畏印である。手の平はノミ目のない滑らかな面で仕上げている。
 左手は脇を締めて肘を折り、吉祥座に組上げた左足のふくらはぎに、手の甲を着ける。手の平を上にして、薬壷を乗せる。
 吉祥座に組んだ足は、深く刻んだ裳の襞で表わし、襞の流れで組み方がわかる。余まった裳は真中で「入」の字で、まとめて処理している。
 頭上の螺髪は一つ一つを几帳面に刻んでいる。鉈彫りはどうしても簡単に仕上げてしまい勝ちだが、ここは丁寧に仕上げている。簡単に表現する省略の妙と命を、どのように残すかが鉈彫りの魅力である。精緻と省略を併せ持つのも鉈彫りの楽しみである。
 顔と胸と手の平を滑らかな面に、それ以外をノミ目の凸凹で、仕上げた対比の妙を魅せている。
 少年の面影の残る青年僧を思わせる像である。

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