仏像名

ふりがな おんせいぼさつぞう

東大寺
制作年代

国宝
奈良時代

音声菩薩像

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

銅造
鍍金

樹 種

像 高

462cm

製作者

安置場所

大仏殿前庭八角燈篭

開扉期間

解 説

 東大寺の大仏殿前にある銅製八角燈籠の扉に付いている音声菩薩像の一体である。天平時代の大仏像は、再度の火災により、大部分江戸時代に造り直したものに変ってしまっているが、この燈籠と菩薩像は、当時の鋳造技術の発達を偲ぶ貴重な遺品である。
「日本の彫刻」 久野健編 吉川弘文館 1968年より

 大仏殿境内の石畳に天平の金属工芸を代表する金銅八角灯籠が立つ。その火袋8面のうち1面おきに4枚の羽目板に、古代楽器を演奏する菩薩のレリーフ立像が鋳造されている。写真はその西南面、横笛を吹く菩薩である。
 火袋には横笛菩薩のほか、西北面に尺八、東北面に銅鈸子(シンバル様打楽器)、東南面に笙(竹管楽器)の奏楽菩薩を1体ずつ配している。火袋の他の東西南北4面は観音開きの銅造扉。各面に雲間を泳ぐように駆け下る獅子4頭が浮き彫りされている。
 羽目板の各菩薩は片足ずつ踏み割り蓮華座に立ち、動感豊かに体をひねって天衣を翻す。背景は透かし彫りの宝相華唐草や菱格子。そこから明かりが漏れ出る仕組みだ。
 菩薩は天平仏らしい張りのある姿を見せ、日差しを浴びるとレリーフとは思えない立体感を現わす。顔や手足は肉付き豊かで、演奏する指さばきも流麗で力強い。
 制作年代は、裏付け史料などがあって東大寺の本尊・大仏の開眼ごろと推定できる。造像の意匠や技法は同寺の国宝銅造誕生釈迦仏に近い。
 羽目板は東南と東北の2面が後世の新造だ。とくに銅鈸子の東北面には、盗難という裏面史まで付録している。
 事件が起きたのは1962年2月。犯人は深夜に大仏殿境内へ忍び込み、バール状の道具で羽目板の菱格子を壊して盗み出した。ところが、重すぎたのか、番犬にほえられてか、賊は盗品を大仏殿の塀内に放棄して逃げた。
 羽目板はかなり手荒く壊されていたが、幸いに鍍金の残る菩薩像は無事で、現在は東大寺ミュージアムに保管、展示されている。灯籠には事件後すぐにプラスチック模造が取り付けられ、その後、銅製を復元して取り換えられた。
 東南面も明治期までに大破して補修、昭和初期に笙の菩薩を新鋳した。これも今は新しい銅製に鋳直されている。
 この灯籠の近年の危機は大気汚染がもたらした。20世紀末に酸性雨を定点測定し、腐食を進める悪性青錆を発見、5年がかりで解体防錆処理した。極めて現代的な課題を抱えた屋外文化財でもある。
「探訪 古き仏たち」東大寺・大仏殿前 音声菩薩 朝日新聞 20134,20より

私 の 想 い

 踏み割り蓮華の上に立ち、飛雲の中に天衣を翻しながら、尺八を吹いている。日本の浮彫り技術の絶品である。
 中門に立ち大仏殿を見ると、大袈裟に言えば目の前全部が大仏殿である。その大きい大仏殿の前に、小さく八角燈篭が見える。近付いて見ると、これが何と462cmもある。大仏殿が大き過ぎるので、大小の感覚が無くなり、可笑しくなる。
 北西面に尺八を吹く菩薩、反対側にも菩薩がある。南西面には横笛を吹いて、雲に乗って飛ぶ姿の菩薩がある。八角面の一つ措きに音声菩薩が嵌め込まれている。四つある音声菩薩の内で一つが盗難で、失われてしまった。現在のものはメラミン樹脂で出来たものである。また、八角面の下部にはそれぞれライオンのような獅子の動物が走る形で彫ってある。
 平成17年4月の「仏像観て歩き2」での訪問では、次のように書いている。
八面あり、真南、真西、真北、真東の四面には、飛天ならぬ、獅子が水中を泳ぐような姿で、4頭が一面に彫られている。どうも四つとも同じものに見える。
 南東面の音声菩薩像は、笙(しよう)を吹いている。踏み割り蓮華台に乗り、衣を翻して吹く姿である。
 南西面の音声菩薩像は、横笛である。この姿で思い出すのが、オルセー美術館で見た紅い衣服を着た横笛の少年である。音楽の教科書にも載っていた気がする。
 北西面の音声菩薩像は、縦笛である。つまり、尺八である。踏み割り蓮華台に立つ飛天像である。
 北東面の音声菩薩像は、シンバルを上下に持つ姿である。確か、この一面だけが、盗難に遭って、後から着けられたと聞く。
 平成22年10月に東京国立博物館に「東大寺展」として、はじめて東京にやって来ました。大仏殿の前から青銅の灯篭をはずして持って来たのである。八角灯篭の無い大仏殿前を想像して見る。比べるべきものがないので、中門からの眺めは、全部が木造建築最大の大仏殿ということになる。
 八角燈籠の八面の内の一つ間をおいた四面に嵌め込まれている。楽器を演奏している女人像である。場所は正方位の中間に当たる、南東、南西、北西、北東の方位に嵌め込まれている。南東から右回りに笙、横笛、尺八、シンパルを演奏している。中でも私の好きなのは、横笛である。この横笛の像と、オルセー美術館にあった帽子を被り赤いスボンを履いた少年が横笛を吹いている絵が重なる。

音声菩薩像画像一覧その1
音声菩薩像画像一覧その2
音声菩薩像画像一覧その3
音声菩薩像
東大寺に戻る
東大寺画像一覧その1 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺画像一覧その2 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺画像一覧その3 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺画像一覧その4 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺画像一覧その5 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺画像一覧その6 東大寺の写真が楽しめます。
東大寺花華一覧その1 東大寺の花々の写真が楽しめます。
東大寺花華一覧その2 東大寺の花々の写真が楽しめます。
東大寺所蔵仏像
南大門
金剛力士立像(阿形) 金剛力士立像(吽形)
石造獅子像 西 石造獅子像 東
大仏殿前庭
音声菩薩像
大仏殿
慮舎那仏坐像 如意輪観音坐像 虚空蔵菩薩坐像
奈良国立博物館
誕生釈迦仏立像・灌仏盤
東大寺1(大仏殿)に戻る
東大寺(法華堂)に戻る
東大寺(二月堂)に戻る
東大寺(四月堂)に戻る
東大寺(戒壇院)に戻る
東大寺(その他の堂)に戻る


特殊名称の観音菩薩像