仏像名

ふりがな ふくうけんさくかんのんりゅうぞう

東大寺
制作年代

国宝
奈良時代

不空羂索観音立像

様 式

俗称又は愛称

製作材質

脱活乾漆造
漆箔

樹種

像 高

362cm

製作者

安置場所

法華堂(三月堂)

開扉期間

解 説

 この不空羂索観音像は、天平二十年(748)、頃、東大寺の一堂として建った羂索堂の本尊である。羂索堂は、法華会を修する堂として法華堂とも呼ばれ、この法華会が三月に行なわれるので三月堂の名もある。
 今日この堂には、十四体の天平仏が竝立しているが、その群像は、ほぼ二種に分けられる。その一つは、この堂と共に造られた不空羂索、梵天、帝釈、四天王、仁王の像で、いずれも脱乾漆造、高さは一丈を越える巨像である。
 これらの巨像を従えて、八角壇上に、金色の化身を輝かせて立っているのが、本像である。不空羂索観音は、煩悩に悩む衆生を済度する観音として、三目八臂の姿に造られ、手には衆生を救う釣り絲を固く握っている。
 当時の制作法の常として、作者をある個人に擬する事は難しいが、この像は東大寺大仏の作者国中連公麻呂の監督のもとに制作が進められた事は考えられる。
 本像は、光背、像とも破損箇所は少なく、八角壇のために頭光が少し下がっている他、右腕から垂れる綬帯や持物の一部などは後補。宝冠も修理は加えられているが、当初の絢爛とした様を充分偲ぶに足りる。
「日本の彫刻 上古〜鎌倉」 美術出版社 1966年より

 この像は、天平十九年(747)ごろに東大寺内に建てられた三月堂の本尊不空羂索観音像である。不空羂索観音とは、煩悩に悩む人々を洩れなく救済するという観音で、その使命から三目八臂の姿に表わされ、手の一つには、羂索(鉤針をつけたつり糸)を持っている。
 この像の充実した体躯、はちきれんばかりの頬などは、天平彫刻中の最高峰に位している。頭上には、3万程の宝石をちりばめた豪華な宝冠を戴き、宝冠には、銀製の阿弥陀如来像が着いている。光背も当初のものとして重要である。
「日本の彫刻」 久野健編 吉川弘文館 1968年より

私 の 想 い

 煩悩に悩む人々を漏れなく救済するという仏様である。三目八臂(さんもくはっぴ)と言い、三つの眼と八本の腕があり、人々を救済する。頭上には、二万八千個の宝石をちりばめられ、銀製の阿弥陀如来像が着いている。
 三月堂の仏様は皆さん大きいお体をされた方々で驚く。なかでも、一際大きく中央に立っておられるのが、不空羂索観音立像である。
 左右に四本ずつの腕があり、そのうちの一本が合掌している。合掌している手の平が、少し開いて隙間が見える。この間に水晶の珠を挟んでいるという。
 眉間に縦に裂けたように見えるのが、三つ目の眼である。宝冠は銀を三本にして、編んだ糸に宝石が通されて、造られていると言う。これほど立派な宝冠が、天平時代に造られていたのだ。
 花弁のように美しい唇、ふっくらとした頬、カーク・ダグラスのように凹んだ顎を観ていると、いろいろな事に気付く。
 そして、八本も腕がありながら、どれ一つ撮っても美しい、配置も整っている。また、八本の手の指は、しなやかで、品良く美しく、気品溢れる指をされている。生身の人間で未だにこのような、美しい指の持ち主に出逢った事が無い。
 両足は別々に波のようにうねって、下に流れ落ちる衣文が、その存在を表わしている。太くどっしりとした脚であるのが、衣文の表現で判る。
 このように細かくいろいろなところを観ていて、ふっと、お顔を見上げると、
「こら。お前も合掌して、お祈りするのだ。心を鎮めて瞑目するのだ」
と、叱られているような気がして、慌てて合掌した。
 仏像をより崇高なものにするために、より美しく、より気高くするために人々は、全ての財力と知力と能力を結集させて、製作したのだろう。
 法華堂に安置された仏像は、時代的にも、芸術的にも優れたものばかりである。その中で本尊という座にあるというには、これほどの宝石と気品と威厳がないと務まらない。
 薄暗いお堂の中で眼と眉が金色に光る。宝冠がシルエットでしか判らない。光背は後光が射したように、放射線状に線が出ている。

不空羂索観音立像画像一覧その1
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不空羂索観音立像
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