仏像名

ふりがな  じぞうぼさつざぞう

六波羅蜜寺
制作年代

重文
鎌倉時代

地蔵菩薩坐像

様 式

俗称又
は愛称

地蔵十輪院の本尊夢見地蔵と言われる。

製作材質

木造、切金文様
玉眼、彩色

樹 種

像 高

89cm

製作者

伝運慶作

安置場所

宝物館

開扉期間

解 説

 運慶の作。一族の菩提寺十輪院の本尊。一名「夢見地蔵」といわれ眉目秀麗な面相や変化のある法衣の襞のまとめ方は実に優れている。
「六波羅蜜寺」縁起より

 もう一体の地蔵菩薩像は坐像で、運慶が八条高倉に建てた十輪院の旧本尊であろうと云われている。
 同じ地蔵菩薩でも、先の鬘掛け地蔵の女性的な姿と違う堂々とした美丈夫で、凛々しい中にたくましい力が籠もった姿である。
 平安後期の地蔵菩薩像が、小さく美しく造られねばならなかったのに対して、鎌倉時代では、地獄の責苦から亡者を救い出すだけの力の表現を、何としても表わさなければ済まなかったのである。
「京都の仏像」 淡交社 1968年より

 もと、運慶が自ら発願して建立した地蔵十輪院(京都八条高倉)の本尊であったと伝えられ、運慶作という。その堂々とした体付き、変化に富んだ深浅自由な衣文の彫法も力強く、確かに当代初期の運慶派の優作に違いないし、この頃の地蔵菩薩像として随一の作品である。眉目秀麗な優しい顔をしている。
「仏像ガイド」 美術出版社 1968年より

 堂々とした体躯と衣文の流動感に富む彫りが、見る者に強く存在感を印象づける像である。「山州名跡志」に運慶と湛慶の合作と、記す像にあたると考えられるが、作風は運慶のものである。
 一木造で右肩以下、脚部、両手首先等に別材を寄せる。面部を矧いで玉眼を嵌入するが重量があり、内刳りはほとんどないようである。
 運慶の像は内刳りした中に木札ないし水晶珠などで心月輪を入れることが多い。一木造を採用したのは、運慶が古典を学習して模索していたためと考えられるが、一方でこの像を円熟期の作とする見方もある。
 両脚部の内刳りを施した中に地蔵菩薩の印仏が納められている。
「六波羅密寺の仏像」より 東京国立博物館 2008年

私 の 想 い

 右手は脇を締めて肘を折り、前に出して錫杖を持つ形になっているが、錫杖はない。左手も脇を締めて肘を折り、前に出して手の平に宝珠を乗せる。
 夢見地蔵と言われている。少年の幼さが残り、これから将来のある人に言う「夢のある人、将来のある人」という意味で「夢見地蔵」と言われるようになったのだろう。
 賢い少年の姿です。二十歳前の将来有望な少年のお地蔵さんです。エリート中のエリートで、東大法学部といった感じの仏像である。
 平成20年7月に東京国立博物館で六波羅蜜寺展がありました。
ライバル対決という趣向で、いろいろな分野の有名作品を分野別に並べて、展示した特別展が東京国立博物館で同時に開催された。
 その時に運慶は、この地蔵菩薩坐像であり、快慶は、東大寺公慶堂の地蔵菩薩立像で、地蔵菩薩の対決であった。同じ地蔵菩薩ではあるが、坐像と立像の違いである。 この機会に両者の作品で同じものはないか調べてみた。以外に在るようでない。阿弥陀如来では、運慶には坐像はあるが立像がない。快慶には立像は数多くある。不動明王では、快慶には坐像はあるが立像がない。ちぐはぐになっている。
 今回の地蔵菩薩像の対決は、両像の両手の形が、ほぼ同型である。しかし、何もしていない、同じ右手のグーであるが、運慶に分があると見たい。何故なら、何か物言いを云いたいと訴えている。
 これを機会に東京国立博物館も、ちぐはぐでも好いから阿弥陀如来編、不動明王編とか、いくつかのシリーズ化をして、紹介してみてはどうだろうか。
 私は、自分用に画像で対比して、仏像を楽しんでいる。阿弥陀三尊編、釈迦三尊編、薬師三尊編、不動明王二童子編など、シリーズにして楽しんでおります。アイデアならいつでも提供出来ます。
「東京国立博物館の企画マンよ。頑張れ」
と、エールを送りたい。
 袈裟を左肩から紐で吊っている。左胸に肩から下がる紐で袈裟を吊る。袈裟は左腕に架かって台座に垂れ下がる。
 左肩から背中に下がる紐で、後ろに廻った袈裟を吊る。袈裟のもう一つの端が、背中から腰に架かる。
 右手に錫杖を持つことが多いのだが、この方は持っていない。しかし、持っているような手の形である。それだけではなく、このグーの握りは、物を言いた気な握り方を感じるのである。
 平成21年10月に京都・滋賀「仏像観て歩き」・副題「千手観音と十一面観音を訪ねる」と銘打って「仏像観て歩き研究会」の仲間と訪問しました。
「先程、三十三間堂で貴方のご長男の湛慶さんの造った、本尊様と横一列に並んだ千手観音様五体を拝観して参りました。また、こちらでは、貴方様の地蔵菩薩坐像と四男の康勝さんの空也さんを拝観させて頂きました。」
と報告しました。
 特に今日は、運慶作や運慶の関係者の作品を拝観することになってしまいました。

地蔵菩薩坐像1画像一覧その1
地蔵菩薩坐像1画像一覧その2
地蔵菩薩坐像1画像一覧その3
地蔵菩薩坐像1
六波羅密寺に戻る
六波羅蜜寺画像一覧 六波羅蜜寺の写真が楽しめます。
六波羅蜜寺所蔵仏像
薬師如来坐像 地蔵菩薩坐像 地蔵菩薩立像 閻魔大王坐像
持国天立像 増長天立像 広目天立像 多聞天立像
吉祥天立像 十一面観音立像 伝運慶坐像  伝湛慶坐像
空也上人立像 弘法大師坐像 僧形坐像  
六波羅蜜寺に戻る 


地蔵菩薩の考察