仏像名

にょいりんかんのんざぞう

醍醐寺

制作年代

重文

平安時代

如意輪観音坐像

様 式

 

俗称又

は愛称

 

製作材質

木造

漆箔

樹 種

 

像 高

49cm

製作者

 

安置場所

霊宝館宝聚院

 

開扉期間

 

解 説

「枕草子」に、「如意輪の人を渡しわづらひてつらづえをつきてなげき給へる、いとあはれにかたじけなし」とある様に、如意輪観音は普通六臂を持ち、右第一手で頬杖を突いて沈思瞑想する姿に造られる。

 右足の膝を立て、左足裏の上に右足を重ねる、いわゆる輪王坐という座り方で、豊満な身体に現われた、柔軟な身のこなし方に如何にも、インドに源流を持つ密教像の感じが漂っている。

 天、人、阿修羅、餓鬼、畜生、地獄の六道を、生まれ変わり死に変わりして、その外に出る事が出来ない、いわゆる仏教でいう輪廻転生の衆生を救うため、この観音は六臂を持っているのだという。

 もと上醍醐の清滝宮の御神体であった仏像で、清滝宮の社殿が寛治三年(1089)、に造営されているところから、その頃造られたものと思われる。観心寺像につぐ如意輪観音像の名品である。

「京都の仏像」 淡交社 1968年より

 

 如意輪観音菩薩は、意のままに無数の宝を出す如意宝珠に、煩悩を破る法輪の威力を加えた観音菩薩である。聖宝が醍醐寺を開いたときに最初に造った仏像が、如意輪観音菩薩と准胝観音菩薩であったという。如意輪観音菩薩の姿には数種類あるが、真言宗では本像のように、左足の裏に右足の裏を重ねて右脚を立てて坐り、六本の腕があって、右手の一つで頬杖を、左手の一つは台座についてくつろいだ姿に表わされることが多い。京都・神護寺の両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)の胎蔵界中にもこの姿の如意輪観音が描かれる。胸前に置く右手が持つのが宝珠で、左肩付近に置く手が持つのが法輪である。

 この像は、醍醐寺の山に湧く水の神を祀る清滝宮に安置されていた。どこか神秘的な雰囲気は、そのような場にふさわしい表現である。また、ふくよかな顔と、くつろいだ姿は大変に優雅である。斜めに傾けた頭部と体部、それに六本の腕の各一部分を、桜の一材から彫り出しているが、その複雑な姿をよくまとめている。冠や胸飾り、腕の飾りは、それぞれ一枚の薄い銅版を切り抜き、さらに文様を浮き出させる加工をしたもので、たいへん精巧で美しい。光背と台座の大部分も造像当時のものである。

「空海と密教美術」展より 東京国立博物館 2011年

 

私 の 想 い

六臂の右は、第一手は胸で手の平に宝珠を載せる。第二手は立膝の後ろから肘を伸ばして、数珠を持つ。第三手は如意輪観音のポーズの頬に着く手である。

 一方、左の第一手は脇の下から手を出して、蓮華の茎を握り、茎の先には咲き掛けの蕾が着いている。第二手は肘を伸ばして、突っ張り左に傾く身体を支える。可なりの突っ張りようである。第三手は脇から人差指を立てて「私が一番」と上に向けて示す。

 頬に当てた手は、手の平でなく軽く握った指である。この仕草に私は日本的なところを感じるが、如何でしょうか。どうも、広隆寺や中宮寺の弥勒菩薩さんのように手の平を当てるのは、自然で無いような気がしてしまう。

この方が余りに気持良さそうにしているので、

「寝ていては、駄目ですよ」

というと、

「でも、こんな温かい日はね。つい眠くなりますよ」

だと、後は、むにゃ、むにゃ、である。

 平成23年7月に「空海と密教美術」で東京国立博物館に来た時には次のように書いた。

如意輪観音坐像の像そのものは、滋賀・石山寺、奈良・岡寺以外の像は小型の像が多い。

 その代わりに、美形の像が多い。頬に当てる指先や手の平やグウのくるぶし先を着けると如意輪観音と思われるが、二臂でも半跏像だと如意輪観音と呼ばれることもある。

 また、等身大の美形で、中々展覧会に出展されないのが、奈良・橘寺の如意輪観音坐像である。前日に湖東の十一面観音と作家井上靖さんの話に意気投合し、翌日も橘寺に寄ったらば、庭掃除中の御住職が、特別拝観と称して、如意輪観音坐像のお厨子の左脇扉を開けてくれました。左手の第二手が肩から垂れ下がる衣に隠れて正面からでは、死角になって見えないのだ。ところが、真横からだから、良く判る。広げて着ける手の平の下には、衣の端が手の平の下に敷いてある。しかも、等身大の如意輪観音坐像の肌蹴た太股を観て仕舞ったのである。以後、如意輪観音像を語る時には、私の自慢の拝観談として、活用しています。

 平成26年7月に「法隆寺夏季大学」入校の際に奈良に、行ったのでその時に奈良国立博物館で開催中の醍醐寺展で拝観する。

 右手は第一手が右脚膝頭に右肘を着き、右頬にグウを握った指先を着ける。第二手は右脚膝を抱え込むようにして数珠を指先に絡ませる。第三手は右脇の下から腹の前に出し、手の平に宝珠を載せる。

 左手は第一手が左脚の太腿の外側に手の平を開いて着く。第二手は脇の下より右脚太腿上で未敷蓮華を握る。第三手は脇からV字に肘を曲げ、人差指先に宝輪が回る。

 

如意輪観音坐像画像一覧その1
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如意輪観音坐像
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醍醐寺所蔵仏像

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西大門
金剛力士像(阿形) 金剛力士像(吽形)
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如意輪観音の考察