仏像名

かんのんぼさつりゅうぞう

醍醐寺

制作年代

重文

平安時代

観音菩薩立像

様 式

 

俗称又

は愛称

 

製作材質

木造

素地

樹 種

カヤ

像 高

51cm

製作者

 

安置場所

霊宝館

 

開扉期間

 

解 説

聖観音は十一面、千手、不空羂索など多面多臂の、いわゆる変化観音が現れる様になってから、もとの観音を変化観音と、区別していう名称である。

 この像は表面の仕上げを、白木のままとした檀像である。もともと檀像とは、白檀や栴檀などの香木を材料として、精密な彫刻を施した、一木造の小さな像の事で、香木の香を生かし、美しい木の肌を直に現わすため、表面を白木のままとする。

 ところが、一木造像の全盛時代である平安前期になると、材料が香木でなくても、表面を白木のままとした、仏像はみな檀像と呼ばれる様になった。

 この像も材料は香木ではないが、表面を白木のままとしているから檀像と言って良い。それだけではなく、純粋な檀像の特色に挙げられる、精密な彫刻を施した一木造の小さな像という点で、一層純粋な檀像に近い。

 しかし、純粋な檀像に見られる首飾りや腕飾りなどの装身具を、一木から彫り出す精密さはなく、その精密さは勢い良く、縦横に刀を奔らせて、彫った裳や天衣のたたみ形に現れている。

 また、純粋な檀像は身体のプロポーションが良く整っているのが、この像は大き過ぎる頭、幅広い顔、豊かな広い胸、引締った小さい胴、太く短い下半身など、むしろ意識的なデフォルメを試みている。

 一般的にこの様な像は、外面的な美しさよりも精神的な深みを現わすが、この像はわずか50cmほどの小像でありながら、表されている気宇は誠に大きく、また森厳である。 恐らく醍醐寺の開山聖宝の時代に、さかのぼる仏像であろう。山深い上醍醐の霊地に祀られた神秘な霊像の面影がある。

「京都の仏像」 淡交社 1968年より

 

 醍醐寺は平安時代初期の貞観十六年(874)に聖宝(832909)が笠取山(上醍醐)に自ら制作した准胝観音と如意輪観音の両菩薩像を開眼供養して創建したのが始まりである。聖宝は真言密教の正統な流れを受け、また、奈良・東大寺で大乗仏教の教えを学んだ高僧であるが、山林修行にも励んでいた。

「醍醐雑事記」によると 准胝観音像は栢木(はくぼく)で造られたという。聖宝は僧侶であるが仏像制作の技術があり、材についても認識が深く、檀像にも理解があった。

 この像は醍醐寺に残る最古の仏像で、制作時期も同寺の創建以前に遡り、聖宝の念持仏であった可能性もある。九世紀も早い時期の作だろう。いわゆる代用檀像で、頭部から台座の蓮肉までを、カヤとみられる針葉樹の一木から彫出、両手の指先や両肘から垂れる天衣も一木から造る。

 子どものように短躯で、顎が張った表情は厳しく、太づくりで量感がある。衣には深い皺が刻まれており、両肘から垂れる天衣も左右に広がり、一部に渦文を表わすなど動きがあって力強い表現である。

 正面を向いてほぼ直立するが、天衣は前方からの風を受けてやや後方に翻り、全身の衣文にも動きがある。このような衣文の表現は唐時代の図像によく見られ、それを参考にして彫刻化したもの考えられるが、平面の図では描かれていない側面や背面を自在に表現しており、作者の力量の確かさが感じられる。

 奈良・法隆寺の九面観音菩薩像など唐時代の檀像やそれに従った日本のカヤによる代用檀像では、緻密な表現を真骨頂とするが、醍醐寺像の場合には細密さよりは、表現の強さや量感の豊かさ、風を受けた動きなど日本での新たな要素が加わり新展開を示している。

「仏像 一木にこめられた祈り」展 東京国立博物館 2006年より

 

 檀像彫刻の代表的作例。檀像本来の檀木を用いたものでなく、カヤと思われる材を代用し、白檀の色に似せるため表面を黄白色に彩色していた。

 両肘から垂れる天衣が風を受けて翻る表現は中国・唐時代の図像に習ったもの。

東京国立博物館 平常陳列 2009年夏季 解説より

 

私 の 想 い

 すらりとした美人形に彫ったのではない。しかし、小さく造ってあるが、 個々の部位はしっかりと造られている。体に比べて腕が太い。手の平も大きく太い。

 平成18年10月に「仏像 一木にこめられた祈り」展として、東京国立博物館で開催され拝観した時には、次のように書いている。

 右手は脇を少し開けて、肘を軽く前に曲げて出す。手首を折って手の平を正面に向けている。

 左手は肘をL字折って、左胸の前で影絵のキツネの指型をしている。親指と中指の間で水瓶の口を持っていたとは到底思えないようにしか、その間は空いていない。短い指で作る指型に、幼さが残る。横から見ると、全体が前のめりになって、五段の蓮弁の台座に立っている。

 平成21年7月東京国立博物館での拝観では次のように書いている。

右手は肘をくの字に折り、手首を返して手の平を斜め前方に向ける。中指と薬指を少し内に入れる。小指は欠けている。
 左手は肘を開けV字に折り、蓮華の茎を握る。足はハの字に開いて立つ。右膝を曲げ、腰を左に寄せる。天衣が両手の外側から下に垂れ下がる。
 顎の張った面相である。厳しいお顔の観音様である。一人で対面すると、年上の女性から叱られている感じがする。どうしても、親戚の叔母さんから叱られていた子供の頃を思い出してしまうのである。
 上記のように
「仏像 一木にこめられた祈り」展 東京国立博物館 2006年
で一度東京に来ていたのである。

 平成26年7月に「法隆寺夏季大学」入校の際に奈良に、行ったのでその時に奈良国立博物館で開催中の醍醐寺展で拝観する。

 右手中指が一番内側に曲がり、人差指、薬指、小指の順で曲りが緩くなる。足はハの字に開き左足重心に体重を掛けて立つ。五段蓮弁の蓮華台に立つ聖観音立像。

 左手は中品に摘まみ右肩からの天衣は腹の前を通り左手の尺骨の中頃に架かり左下に垂れ下がり裾が足元に巻き込む。もう一つの天衣は左肩から垂れ下がり左脇から左太腿を通り両膝頭でU字に折り返し、右手首上に架かり右足下に垂れ落ちる。

 

聖観音立像画像一覧
聖観音立像
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