仏像名

ふりがな だいにちにょらいざぞう

広隆寺
制作年代

重文
平安時代

大日如来坐像

様 式

俗称又
は愛称

製作材質

木造
漆箔

樹 種

像 高

95cm

製作者

安置場所

霊宝殿

開扉期間

解 説

 大日如来像には胎蔵界と金剛界の二種類がある。密教では、宇宙に存在する一木一草に至るまで、大日如来の化現であり、大日如来は森羅万象の生命の根源であると説く。
 胎蔵とは、母の胎内に宿った胎児が次第に成長し、ついに誕生する様に、衆生に悟りのこころを得させる大日如来の慈悲の相を表わしたもの、金剛とは、衆生は本来大日如来の化現したもので、それ自身大日であり、その悟りの心は金剛石の様に硬く、迷いのために損なわれない事を表わす。この大日如来像は胎蔵界大日である。
 平安後期特有のやさしく整った女性的な姿は、胎蔵の意味を適切に表現している様である。
 広隆寺の平安前期までの主要な仏像はほとんど顕教像や雑密像に限られていた。平安後期になって、ようやく密教の影響を受けた様であるが、伝統が古いため、主要な堂宇の本尊を密教像とする事はなかった。
 この像も大日堂とでも呼ばれた小堂に祀られていたのであろう。
「京都の仏像」 淡交社 1968年より

私 の 想 い

 胎蔵界の大日如来である。法界定印を結んで、吉祥坐に座る。脇を少し開けて、自然体で座禅を組む。
 足首から先が左膝の内側に見える。左肩から掛ける袈裟が外側から内に折込んでいる。良く見る形は内から外に折り返しているが、この方は外から内に折込んでいる蓮華坐に座る。
 ここ数年間かの年賀状は、仏像のある寺の中から「国宝・重要文化財を訪ねる」シリーズを紹介して来ました。来年の年賀状は、大日如来と弥勒如来ということにしました。
 この広隆寺には、二つの大日さんが居られます。そこで、ベートーベンの2つの交響曲を奉げます。その内のこの方には、第7番を奉げます。この第7番は良く聴く曲である。特に第2楽章には、葬送曲にふさわしい曲がある。ミュンヘンオリンピックでイスラエルの選手団が、選手村でパレスチナのテロによって、凶弾に倒れた時の葬儀では、この曲で葬送されたのである。ヴァイオリンの物悲しい音色は、葬送にぴったりである。
 また、この時ドイツは東西に分かれており、統一されておりませんでした。しかし、統一選手団を組み、優勝者表彰の国歌は、同じベートーベンの第5番の第2楽章の旋律が使われて、統一国旗を揚げたのである。この旋律も高揚感があって好きだ。
 第1楽章は、オーボエの音で始まる。弦楽器により揺さぶるように続く。フルートが主題を奏でる。高い音色で全体を主導する。ここがこの曲の聴きどころであり、フルートの出来不出来で決まると言って好い。全体の印象もここで違って来る。

 フルートと弦楽器の掛け合いがもう一つの楽しみである。クラリネットの主題で畳み掛けるように競り上がり、ティンパニーの連打で終わる。
 第2楽章は、コントラバスの低い音で始まる。重苦しい音が響く。チェロが主題を奏でる。次々に高い弦により変奏が繰り返され、悲しみが加わり積み重なって行く。
 この曲は何といっても葬送にふさわしく悲しい旋律である。父親の葬儀では、葬送のバスの中で、この曲のテープを掛けて火葬場まで送った。父は洋楽に興味のない人でしたが、この曲で葬送したのである。
 フルート、ホルン、クラリネットと変奏が繰り返され、最後はコントラバスのピッチカットで終わる。
 第3楽章は、ティンパニーの連打とフルートの高い音色でリズミカルに始まる。尻を叩かれるという言葉がある。正にその通り、ティンパニーがところどころで連打で急き立てる。弦楽器とティンパニーの対話で第1主題が続く。この曲もティンパニーが重要な存在である。第2主題をホルンが低い音で吹き、フルートが復唱する。弦楽器が加わる。
 第4楽章は、弦楽器とティンパニーの対話で始まる。小刻みな旋律に変わり、忙しなく先を急ぐ。フルートと弦楽器の対話に変わり、更に先を急ぐ。ティンパニーがリズムを刻む。弦の高音と低音の対話になり、弦楽器とティンパニーの対話に変わり、ティンパニーが合の手を入れる。そして、終曲へ向う。フルートが高い音で第1主題を吹く。更に終曲へと急ぐ。ティンパニーが連打で盛り上げ、階段を駆け上がって行く。最終盤に追い込んで行く。弦楽器、管楽器、ティンパニーが総動員して終える。
 葬送をするのに使われる旋律が存在する曲であるにしては、終曲の収まりの好さで、すっきりした気分になれる交響曲である。この当たりにこの曲が良く聴かれる所以があるのだろう。

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